「第1回教育行政のあり方検討会」についての見解

「第1回教育行政のあり方検討会」についての見解

6月16日(土)県庁にて第1回の「教育行政のあり方検討会」(以後「検討会」)が行われた。 

開催のあいさつで川勝知事は改めて「検討会」設置の目的が「続発する不祥事」対策であることを強調したが、県教委が提出した資料によれば、教職員の懲戒件数は、ここ10年の平均15.4件に対して昨年度は14件で、昨年度顕著に増加したという数字上の根拠はない。合わせて全国的な状況では、平成22年度懲戒処分の発生率は全国第29位であり、特に際立った発生率でないばかりか全国的にも比較的低い発生率であるともいえる。さらに、教育長が教員出身である都道府県(14都道府県)における懲戒処分発生率は、全国20位以内はわずか5都道府県である。

もちろん教職員の不祥事は決してあってはならないことではあるが、不祥事の原因を教育委員会制度のあり方や教育長の任命のあり方に求める「検討会」の設置理由は最初から破綻していると言わざるをえない。

「検討会」の中では、全体的に静岡県教育委員の積極的な発言が目立った。なかでも「教育委員会は形骸化していないか」という委員の問いに、本県教育委員は、「柔道必修化に伴う事故防止策を専門家として積極的に提言し、教育委員会事務局は全国一早い対応をした」と、具体的な例を示して教育委員が果たした役割を強調したことは説得力があった。

今回特に注目されたのは、県外から招聘された「検討会」委員の発言であった。大阪府教育委員長の陰山氏は、静岡県の教育指針が具体性に欠けるとし、「大阪では通らない」と述べ、橋下知事からいかに圧力をかけられているかを伺わせた。また知事と教育委員が直接意見交換できる機会が「最近は減った」と苦笑する場面もあった。「学力の向上」にこだわる陰山氏対し、本県の教育委員は静岡の「全体の底上げ」「一人ひとりを大切にする教育」を強調した点は大いに評価できる。

また、元民間人校長で現大阪府教育委員の中尾氏は、「民間の経営方式」を学校や教育委員会に取り入れる必要性をさかんに強調したが、この点についても本県教育委員は、「教育は、効率や迅速性よりじっくり時間をかけることが大切」と応じ、教育の本質をつく発言として評価したい。

「検討会」では、不祥事問題とは別に本県教育委員会制度のかかえるいくつかの問題点も浮かび上がった。ひとつは、教育委員会の施策が県民に届きにくく、また県民の声を直接聞く機会がないことである。ふたつめは、教育委員が教育予算獲得のために直接知事と話し合う場がないことである。さらに、教育現場からの声として「検討会」委員から、現場の教職員と県教委の関係が希薄で、対話不足からくる認識のズレも指摘された。

今後の「検討会」が、教職員の不祥事や精神疾患の遠因となっているといわれる「多忙化」を解消し、「教師としてのやりがい」を取り戻せることに手助けになる教育行政のあり方とは、という議論に進んでいくことを期待する。

投稿日: | カテゴリー:トピックス, 生活権利 |